
2月。暦の上では立春ですが、八ヶ岳南麓の北杜市はまだまだ冬の真っ只中。1年で一番寒く、これからが雪が降りやすい時期となります。まだまだ冬というのは、全国的な話かとは思いますが、冬が早く始まり、終わりが遅いこの場所。一番寒い時期だからこそ、春という言葉が待ち遠しくなります。
北杜市に移住して8年程、冬の生活で諦めたことというか、手放したことがあります。それは薪ストーブで生活するということ。元々、薪ストーブに強い思いがあったわけではなく、お洒落、楽しそうくらいに思っていたところ、購入した家に薪ストーブがついていたというのが、私と薪ストーブとの出会いです。おまけについてきたプレゼントのようなものでした。
ただ、実際に使ってみると、楽しいけど、手がかかるもの、そして、使うほど手になじむものでした。当初は薪に火を着けることも大変で、恥ずかしながら、煙が逆流して家の中が煙臭くなったこともあります。とは言え、炎の揺らめきと、どの暖房器具とも代えがたいポカポカとした暖かさ。手に入れてみると、八ヶ岳南麓への移住の象徴のようなものに感じ、夢中になってしまいました。

一方で現実は厳しい。
手がかかるのは、薪を燃やすことより、断然、薪を準備することにありました。売っている薪は高額で、札束を燃やすようなものと言われます。その為、庶民が薪ストーブを頻繁に使うには、木を集め、チェーンソーで切り、斧で割り、薪棚で2年ほど乾燥させる必要があります。
私は木を無料で集めることは当初から諦め、丸太を2トンほど購入し、自宅の駐車場にトラックで落としてもらいました。そしてチェーンソーを購入し、薪ストーブに入る、適度な長さにカットをする。この玉切りという作業が終わらないと、丸太を移動することが出来ない。その間、駐車場が使えなくなるので、無理をして2日間で完了させる。そして、カットした大量の丸太を移動、そこからコツコツと、斧で薪割を休みの日に行うのです。そして薪を乾燥させ、使えるようになるのは早くて来年になります。

この一連の作業が結構大変なのです。
薪を作ることのみを趣味とするのであれば、フルタイムで働きながら出来るのかもしれないが、私には難しかった。休みには出かけることが好きだし、何よりコツコツと続けることが苦手なのかもしれない。
その為、当初は冬の間に終わるはずの薪割は遅々として進まず、放置された丸太には、きのこや苔が生えてしまった。丸太を購入し、玉切り、薪割、乾燥というサイクルを3回ほどこなしたが、正直疲れてしまった自分がいました。
とは言え、薪ストーブは楽しい。その為、ここ最近の冬は、灯油ストーブを基本とし、週に1回ほど薪ストーブを楽しむ。薪ストーブは日々の生活では無く、たまの贅沢というのが、私と薪ストーブの距離感となったのです。時間が出来れば、いやいや、結局はマメな人でなければ難しいのではと思う、冬の日です。

(八ヶ岳事務所 大久保武文)