目まぐるしく季節の変化を受け入れる日々、それが八ヶ岳南麓の10月でなないでしょうか。
前半には稲刈りが最盛期を迎え、田んぼの様相が日に日に変わってきます。黄金色の稲が次々とコンバインで刈り取られていく様はなかなかダイナミックで、稲が天日干しされている景色は清々しいものがあります。
ただその後、天日干しされた稲も回収されると一転、寂しさのようなものが漂います。そのころになると気温も大きく下がり、10月の中くらいには最低気温が10度を下回り、後半にかけては1度近くになる日も。
秋の様相も気が付けば冬へ。涼しいと思っていた気候がいつの間にか寒いに変わっています。10月後半には周囲を見ると標高の高いとこから紅葉で山々が色付いています。南アルプス、八ヶ岳の頭には積雪の様子も。毎年、薪ストーブの火入れの時期もこのころでしょうか。季節の変化を間近に感じられる北杜市の10月です。
■身近な縄文時代
八ヶ岳山麓は縄文文化が花開いた地域として、考古学好きな方には知られる場所。北杜市、茅野市、富士見町には考古学資料館があり縄文土器の実物が見られ、当時の人々の暮らし方を知ることが出来ます。ロマンのある話、でも現在の我々には関係ないよねと思うのだが、そんな縄文時代を身近に感じられるのが、意外にも土地の売買です。
北杜市では売買をする土地が、縄文遺跡の上にあるということが度々あるのです。現在は集落であったり、町工場であったり、畑や森だったりと一貫性がなく、はたからみても、縄文遺跡があるか見分けがつきません。そこで、売買の際には埋蔵文化財センターという場所に照会をかけることになります。標高が高いエリアでも該当することがあり、縄文時代は今より気候が温暖だったのでしょうか。
縄文遺跡の跡地に家を建てる際は試掘調査が入り、めぼしいものが見つかれば発掘、写真や記録を残して埋め戻して調査終了となります。調査費用は市が負担します。以前、試掘調査に立ち会う機会がありました。
試掘とはいえ、遺跡発掘、さぞかし繊細な作業をするかと思ったら、実際にはショベルカーでガツガツと地面を掘っていきます。かなり広い土地でしたが、作業は1日かからずに終了。それでも縄文土器のカケラが何点か見つかり回収がされました。
縄文人が住んでいた場所にまた現代の人が家を建てる。時代を超えた人の営みになんだか不思議な楽しさがあります。少し縄文時代が身近に感じられる瞬間です。
(八ヶ岳事務所 大久保武文)