縁のあった山梨で何件か物件を見に行き気に入ったのが北杜市長坂町小荒間だった。南アルプス、富士山、八ヶ岳が一望でき、高度1000メートルで夏でも涼しいこと、畑がついていて農作業ができることなどに魅かれ、週末を中心に行き来し始め11年目になった。
仕事をしていた最近までは一年に過ごせたのは、多くても4分の一ほどであった。私は家の前にある畑で野菜作りに精を出し、できる範囲の収穫に満足した。妻は大きな機を構え趣味の域を超えた着物づくりの拠点としている。
小荒間でのこの10年は仕事に忙しい生活から離れた非日常であった。「神田の大糸桜」の見事な花の下での花見。お気に入りの場所で食べる「外食」。毎年舞い飛ぶウスバシロチョウ。近くを流れる小川のほとりでのワサビやセリ摘み。秋の「じこぼう」採り。庭中に咲き乱れるコスモス、など。
庭に咲き乱れるコスモス。
さて私はこの3月で完全に退職した。ただし定住には至っていない。退職後は圧倒的に小荒間に居ることが多くなった。種まきや植え付け後も目が行き届いた今年の野菜の出来は一番だったと自画自賛している。うちの畑でも獣害は大問題で、食べごろのスイカや大豆を食べられた反省で設けたフェンスは確実に高くなった。
今年の夏の暑さは何といっても異常だった。今までは耐えられないほどの暑さはひと夏に2,3日ほどだが、今年は川崎と変わらないくらいの暑さが続いた。温暖化は切実であり、この先の夏も心配である。山梨の魅力は何もないことだった。山々の美しさ、自然豊かな里山、田畑が見事に広がる風景があれば十分だった。しかし近年森林を伐採してまで設置された醜いソーラーパネルに歯止めはかけられないのか。10年間で感じる変化である。
小荒間での田舎暮らし第2章はどんどん日常になっていくことだろう。人づきあいがあまりなかったこの10年。今までほとんど参加しなかった「ふるさと倶楽部」のイベントに徐々に参加できるようになった。おかげでたくさんの方々と知り合い交流の輪が広がっている。これが一番大きな変化であり、その輪が大きくなることが今一番楽しみである。
八ヶ岳ふるさと倶楽部交換日記
舘野 進(たての すすむ)
神奈川・川崎市⇔山梨・北杜市
1958年東京都生まれ。
今年3月で37年務めた東京都を一年早く退職。
妻とともに「田舎暮らし第2章」を模索中。