二年前の夏、千葉から長野・諏訪へ約300㎞の道程を4時間かけて引っ越しした。我が家の猫一匹も同行者であった。籠に入れるのも一苦労したが、はじめのうちは鳴いていたが、高速道路に乗ったら静かになった。却って、心配になったが。
移住して一か月程は、室内で飼育することにしたが、窓辺からの景色を眺めている姿は、寂しげであり、元の家に戻りたい風でもあった。暫く室内飼いにしたのは、実は心配があったからだ。聞くところによると、猫には帰巣本能があり、3000㎞も離れた元の家に戻った例もあったと言う。我が家の猫にそのような能力があるとは思えなかったが、もしものことを考えて室内に留めることした。
一か月後、いざ、外に出すことにしたが、猫用の出入り口を作り、猫には首輪に名前の書いた名札と出入り口の開閉用のメダルを付けた。最初は、帰ってくるか心配したが、家の生垣の下でじっとしていたが、他家の猫に追いかけられて慌てて戻ってきた。暫くして首輪をどこかで外してきたようで、自動開閉システムは意味をなさなくなってしまった。
さて、こちらでの生活は、猫にとって楽しいものになったのであろうか。思うに、都会と違って、車があまり来ないこと、畑と林の中で、自由に走り回れること、傾斜地の為、隣の家の屋根に登って昼寝ができること、そして、ネズミやもぐらをねらい、時には捕獲できることなど、生き生きと生活しているように見える。
しかし、他家の猫達との交流はうまくいっていないようだ。こちらの猫は、人懐っこいので、人に寄ってくるのが多いが、我が家の猫は、他家の猫が近づくと「ビビリ」ですぐ逃げ帰ってきてしまう。もう少し、ゆったりと過ごしてほしいと思うのだが。
とはいえ、二年たち、千葉より大分寒い冬でも、夜、外に狩りに出かけ、獲物を見せに戻ってくる。朝四時半ころには、私達の部屋にきて騒ぎはじめる。やむなく起こされてしまう。昼は、太陽の光が注ぐ出窓に寝そべって、雄大な山々を臨み、夕方には、学校から道草をくいながら帰っていく小学生を見送っている。
このところ、私達は、地域との繋がりが広がり、家で過ごす時間が少なくなってきているが、我が家の猫は、この自然の中で、悠然と生活しているようだ。
八ケ岳ふるさと倶楽部交換日記
齊藤政雄(さいとう まさお)
千葉・佐倉市→長野・富士見町
1949年東京都生まれ。2017年7月より定住。
野菜を作り直売所での販売や地域でのボランティア活動など。