うちのカミさんはヘビが嫌いだ。まぁヘビを好きな人なんてそれ程 多くはいないと思うが、カミさんの場合は、苦手・嫌いを通り越して、恐れてさえいる。この地に居を構えるに当たっても、敷地内に沢や池があれば「ヘビが寄ってきそう」。
繫みをみつければ「ヘビが住んでいるんじゃない?」…そんな訳で、今の住まいは、矢鱈明るい良く乾いた場所である。
それでも山里のこの地にヘビが全くいない訳もなく、山歩きをすればお目にかかる事もある。私は見ていないが、何故か目ざとく見つけるカミさんは「キャァ~」と乙女(?)の様な悲鳴と共に10メートルは瞬間移動をする。
日頃は「どっこいしょ!」の掛け声が無ければまず持ち上がらないあのお尻が、である。そして私に前を歩けと指図をする。
不思議と私が露払いをするとヘビとの遭遇は全く無い。この夏にも裏の畑にヘビが出たらしいが、私は知らない。それから以後、カミさんは畑にでる前に私を呼ぶ。先に行って偵察をして来いと言うのだ。
畑でヘビを見かけた事など一回も無いが、ていの良いヘビ避けである。私は思う。どう考えたってヘビよりカミさんのほうが強い。ヘビだってカミさんを見れば逃げ出したくなるだろう。「キャァ~」の声に恐怖を覚えるのはヘビのほうだ。
何でそんなに嫌うのか、カミさんに聞いてみた。いわく「あんな手も足も羽もついていないのに、地べたや木の上を移動出来るのはおかしい。異常である。大体人間は日常性の欠如したものに、無条件に不安を感じ恐れるものだと、何かの本に書いてあった」と訳の分からない返答である。
もう相手にするのは止めて、おとなしくヘビ避けのお役目を務めようと考えるに至ったしだいです。間もなく我が家の周りは、一面の桜に包まれる。その桜に皆が心を奪われている頃、わがカミさんと足元に潜む見えない敵(カミさんには見える!)との果てしない戦はスタートする。(勝負はスタート以前に既についているのですがねぇ~)
八ヶ岳ふるさと倶楽部交換日記
秋澤 宏篤(あきざわ ひろあつ)
東京・世田谷区→山梨・北杜市
1946年長野県松本市で生まれ、3歳の時に東京・世田谷に転居。以来65年住み続ける。2016年11月に北杜市小淵沢に移住。寄る年波で、足が少し弱くなった気もするが、あと10年位は山登りを楽しみたいと思っている。