いつのころからか、ここにきて何年経ったか、すぐにわからなくなってきた。
いつのころからか、子供たちと対等に話し、相談することもあるようになってきた。
いつのころからか、今年のコメは美味い。うまくいった一昨年より美味い、とか、偉そうなことを言うようになってきた。
いつのころからか、仕事を手伝ってくれる人が増え、なんだか会社らしくなってきた。
いつのころからか、冷え切った朝に、くっきりとした稜線を見ても、なんとも思わなくなってきた。
そんなそんなで時間は流れた。
冬の田は佗しい。むき出しの土と枯れた土手があるだけだ。
初夏の田は麗しい。稲が浮かぶ水面は、その深さがどこまであるのか、窺い知れない。
部落の人々はいつも端的で、辛抱強く、実直で愚直だ。来たり者はいつも多様で、物知りで、あてにならない。
ここは田舎だが、コンビニが何軒もあり、夜中熱を出した子供に冷たいヨーグルトを食べさせられる。
ここは田舎だが、アマゾンプライムは次の日に届く。
ここは田舎だが、飲食店が跋扈し、代謝が活発だ。
ただ、ここは田舎なので、上野にモンクを見に行くのは億劫で、「カメラを止めるな」も、映画館ではやっていない。
そして、ここは田舎なので、ランニングコースに絶景が溢れ、夜明け前の森に光る猪の目に、驚くこともできる。
実はどこにいても、田舎も都会もなくて、人付き合いが当たり前のようにある。それは、田舎でも都会でも付き合う人は付き合い、付き合わない人は付き合わない。なので、どこに住んでいるかはあまり関係ない。
最近ようやくこの地に足がついてきたなあと感じます。傲慢を抑え、感謝を忘れず、謙虚に、さっぱりと、過ごしていけたらなあと思います。
田舎からの拙い報告でした。
八ケ岳ふるさと倶楽部交換日記
今井 久志(いまい ひさし)
山梨・小菅村→山梨・北杜市
1973年大阪府藤井寺市生まれ。
2005年八ヶ岳南麓に移住。
夫婦、子4人、犬1匹と暮らす。
林業と建築を生業とする会社を経営。
マラソンと議論が趣味。