我々が住む山梨県北杜市は、山岳絶景日本一と言われる場所です。それは、富士山と南アルプス、八ヶ岳に囲まれているからです。2000年に家を八ヶ岳に建てて、10年間週末通いを経て脱サラ、2010年に移住して畑を耕して暮らしています。この畑からは、富士山、南アルプス、八ヶ岳全てが見えるのです。なので、ある意味で日本一の畑なのです。
でも、10年前に耕作を始める時は、土は痩せていてアカザ、ギシギシ、スギナなどがびっしり生えた所謂耕作放棄地でした。毎年、大型ダンプで牛糞堆肥の大量投入を続け、酸性土を中和し続けた結果、肥えた土に変わって来ました。しかし、いろいろ問題もあります。周りの農地より高い場所の為、水が無い。3方向は法面に囲まれて草刈りが大変なこと。農作業はどれも厳しい作業ではありますが、頭を起こせば絶景の山々が癒してくれます。
今は、この畑(約600坪)と今年借りた耕作放棄地(90坪)を耕作していますが、一時期は、あちこち借りて田畑約2000坪をやっていました。作物は、野菜のほとんどは挑戦しました。挑戦すれば、失敗は付き物です。図書館で農の本を借りて、独学&我流でやってきましたので、失敗の連続。例えば、玉ねぎ栽培。秋に肥料を撒いて耕運して穴あきのマルチを張って、玉ねぎの苗を植えて初夏に収穫するのですが、冬を越さなければなりません。当初は何も考えず7000本植え付けました。しかし、寒さで土が凍み上がり、苗が抜けてしまい多くをダメにしてしまいました。それでも、色々試行錯誤して上手く作れるようになってきました。
さて、農で食べて行けるのか?ですが、これはYESともNOとも言えません。その人の栽培能力と営業能力以外にも多く影響されるからです。以前は、都会で暮らしている方に野菜BOXを宅配で送ることをしておりましたが、異常気象が年々ひどくなったため、やめました。今は、宿をやりながら自分たちが作った無農薬の野菜をたっぷり使った料理を提供し、余力で作った作物をスーパーの産直に出しています。手塩にかけて栽培した野菜が1つ100円、手数料を引いたら80円が相場です。
日持ちしない野菜を産直に大量に出すと競合が多ければ売れ残り、ダメにしてしまいます。今年、自分たちの独壇場の野菜があったとしても、次の年は、必ずと言っていいほど他に作り手が出て来ます。日々競争です。
こんな生活をしていますが、今が人生で一番幸せだと思っています。だって、カッコウの声を聞きながら、絶景を眺めることが出来る職場で働いているのですから。
八ケ岳ふるさと倶楽部交換日記
稲岡雅彦
神奈川・横浜市→山梨・北杜市
1959 年岡山県生まれ。サラリーマン時代様々
な開発に携わる。2010 年移住し就農。