「何も起きないこと」に払う価値(8月の八ヶ岳だより)

北杜市 移住だより

8月の八ヶ岳だより

連日の猛暑が続く日本の8月。気象庁の昨年の平年値を見ると、東京都心の8月の平均気温は29.6℃。一方、八ヶ岳南麓・大泉では平均気温25.4℃とかなりの開きがあります。さらに朝の最低気温で比較すると、東京より5℃以上低く、高原らしい爽やかな空気が広がります。数字で比べてみると、八ヶ岳南麓が「避暑地」として親しまれてきた理由がよく分かります。

南アルプスを源とする清流、真夏でも爽やかな空気が漂う。(山梨県北杜市白州町)

■「何も起きないこと」にお金を払うという価値

自宅を購入してから、気が付けば10年が経ちました。先日、火災保険と地震保険の更新案内が届き、見積書を開いて驚きました。前回加入した10年前と比べると、保険料はほぼ倍近くになっていたのです。

近年は自然災害の増加や建築資材・人件費の高騰などを背景に、火災保険や地震保険の保険料は全国的に上昇しています。必要なものだと理解しながらも、「ここまで上がるのか」と思わずため息が出ました。

家を持つということは、購入して終わりではありません。固定資産税を毎年納め、外壁や屋根の塗り替え、給湯器やエアコンなど設備の交換も必要になります。こうした費用は目に見えるため、家を維持するための必要経費として納得しやすいものです。

一方、火災保険や地震保険は少し性質が異なります。不動産の売買では、建物の引き渡しまでは売主が建物を守る責任を負い、その間は火災保険を継続します。そして引き渡し後は、その役割を買主が引き継ぎます。

保険料は決して安くありません。それでも家が新しくなるわけでもなく、何も起きなければ一度も使わずに終わるかもしれません。だからこそ、「もったいない」と感じるのは自然なことです。

しかし、保険は「負の宝くじ」と考えることもできます。宝くじは当たることを期待して買いますが、保険は絶対に当たってほしくない出来事に備えるものです。そして、当たらなかったことこそが最大の幸運なのです。

日本は世界でも有数の自然災害国です。台風や豪雨、地震など、一度被害を受ければ損失は数百万円から数千万円に及ぶこともあります。その負担を自分だけで背負うのは、多くの家庭にとって容易ではありません。

もちろん、保険は加入していれば安心というものではなく、補償内容を理解し、自分の暮らしに合っているかを見直すことも大切です。更新のタイミングは、値上げを嘆くだけでなく、必要な補償を考え直す良い機会でもあります。

家は人生で最も大きな買い物の一つです。そして守るべきものは建物だけではありません。家族と過ごす何気ない日常や、積み重ねた思い出も大切な財産です。

一年を振り返って、「今年も保険を使わずに済んだ」と思えたなら、それは損ではなく、何事もなく暮らせた証しです。

毎年届く保険料の請求書は決して歓迎できるものではありません。それでも、その一枚は「もしもの日」のためだけではなく、「何も起きない日常」を守るための安心料なのだと思います。火災保険と地震保険は、一軒家を所有するうえで最も静かで、そして最も価値のある経費の一つなのかもしれません。

 

(八ヶ岳事務所 大久保武文)

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